History | イエヒト

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ヒストリー

As who I am

荒井好一郎建築設計室
荒井 好一郎さん

友人の建築士が行っており興味を持ちました。
実際の体験談を聞いたりしながら、導入するかどうかは数年迷っていたと思います。結局自分でやってみないと良いも悪いも合うも合わないも分からないので、導入を決めました。当時は、ちょっと仕事が薄く、自分の仕事のやり方についても悩んでいる時でした。
自分の個性を活かし自分らしく仕事をする、その為の武器を持ちたい、そんな思いだったのを覚えています。
 

CM分離発注方式を経験した率直な感想を教えてください。
導入前の総合建設会社を立てた建設工事においても、木材だけを別途発注することを行っていました。部分分離発注と言えば良いでしょうか。これは発注者や設計者の木材活用(地場産材活用)への拘りを実現する方法として行っていたのですが(いわゆる産直方式です)、今考えると、材料を支給して施工してもらうリスクマネジメントいうのはまったく考えていませんでした。同じことをやっていた先輩建築士からは、床仕上材の乾燥に不備があり、張り替えることになってしまった際、施工費は工事会社が負担してくれたが材料費は設計側で負担せざるを得なくなった。という話を聞きました。発注者の為に良かれと思ってやっていることでしたが、思わぬ形で自分に責任がのしかかってきたという事例です。CM分離発注方式では元請け業者への気兼ねなどなく、工事等の保証も考慮した状態で出来ることに大きなメリットを感じます。また発注者と一緒に、発注者のために、モノヅクリに関わっているという充実感を通常の設計監理業務の数倍強く感じられましたし、完成時の達成感もそれに比例して大きなものでした。
 
CM分離発注方式を実践しているなかで、不安に感じていることを教えてください。
CM分離発注方式を実際に自分でやって感じたのは、各工事業者がある程度固定化されている方がやりやすいということです。これは元請け化してしまう感じもするので若干抵抗感もありますが、工事のマネージメントの面では信頼できる業者さんとの方が圧倒的にスムーズに業務を行えますし、発注者には信頼がおける工事業者を紹介したいです。その際には複数業者による相見積もりがとりにくくなるので、工事金額が適正なのか?というコスト面で不安があります。現時点ではCM分離発注方式を実践している仲間と情報交換して、少しでもコストが適正かつ安くなるように奮闘しています。それぞれ信頼できる業者が違っているのですが、共通の工事業者をちょっとずつ増やしていって、CM分離発注方式をやっている我々のグループからまとまった受注が出来ていると感じてもらえるようにしたりもしています。また、工事業者の出してくる単価や経費の感覚はかなり地域差がありそうで、全国の他の地域の価格が、私がいる富山では、必ずしも当てはまらないというのが悩ましいですね。その地域の金額感覚というのは結局実際に肌で感じたり、情報収集して把握していくしかないのかな、という思いです。
 
CM分離発注はどのような可能性があるとお考えですか?
発注者や設計に関わる方の「建設」に対する価値観を変えられる可能性があると思います。設計側から見ても、工事現場は元請けのもので、発注者と打合せをしたり、DIY作業をしていても「お邪魔をしている」という感覚があります。
しかし分離発注では、設計者も発注者も堂々と積極的に現場に行けますし、DIY作業を行うことも出来ます。(もちろん細かい部分でのリスクは理解した上で、です。)工事業者も分離発注の現場ではそこに違和感は持たないはずです。そうすると発注者は自分たちが建設の中心にいてモノヅクリに積極的に関わっている感覚を持てますので、建物を建てるという行為の価値観が変わるように思います。造ってもらうという受け身ではなく、建物の維持管理の面でも良い影響があることに期待したいです。そしてこれは設計者にとっても同じで、通常の設計監理業務に対してモノヅクリという観点での違和感や、疑問がある人は、是非一度取り組んでみてほしいという思いです。未経験な事も多く、大変な思いもしますが、それは糧になります。その経験以上の達成感や充実感を感じられるのは間違いありません。
CM分離発注を導入する前と後で、事務所経営に変化はありましたか?
建築士としてできる業務が増え、1件あたりの報酬金額が上がったので、細々とした低金額の仕事をすることが減りました。意識的に減らしたというよりも、CM分離発注の現場を抱えると通常の設計監理よりも現場に行く回数が増えますし、移動だけでも時間を取られることが多く、別の仕事に対応することに物理的に限界があるので、自然とやらなくなったという感じです。
長スパンの業務で仕事が構成できると、慌ただしさも少なく先の見通しが立てやすい、落ち着いた経営になるというのを感じています。元々、職人さんと交流したり、発注者と一緒にDIY作業したり、現場に関わること自体が大好きな性格なので、現場における工事マネージメントのところでもしっかりと報酬が得られるというのは自分にとってはやり甲斐の面でも大きいです。そういう意味では、現場にあまり興味が無く、個人の事務所で、とにかく設計物件の数を増やしたいと思っている建築士にはCM分離発注は向かないのかもしれません。自分自身の力で受注できるCM分離発注が前提での設計監理業務が100%で、下請け業務はなし、という経営状況に持って行くのが私の目標です。
CM分離発注の採用を検討している発注者に対し、特に気をつけている事がありましたら教えてください。
分離発注だから工事費が安くなるという論法で絶対に話をしません。CM分離発注でコストダウンしたという事例も耳にしますし、コストダウンの可能性があるのも間違いないと思います。しかし、私の場合、実際にそうならない可能性もあるからです。
特に私が取り組んでいる、大工造作と製作建具を多用し、既製品をなるべく使わないような建築においては、作業人工が読みにくくなることが多く、工事業者にとっては身構えるような仕事なわけです。この場合、工事業者さんは多少なりともリスクを見込むようでそれだけコストに影響します。協力的な下請け業者を上手く使える総合建設会社の方が工事原価が安くなり、結果、総費用が安くなる可能性があります。
また、私が業務を行う地域ではそもそも総合建設会社の粗利割合がそれほど高くないということもあります。工事費の1割取れれば良いという会社も少なくありません。こういう前提で比較すると、CM分離発注方式でのコストメリットはそれ程期待できません。価格の透明性も特徴の一つとして良く言われます。これは設計者にとっては非常に分かりやすく、コストマネージメントがしやすいですが、発注者にとっての核心は高いか安いか、予算に見合うかどうかだと思っています。なので、私が発注者に伝えるのは「設計監理業務に掛ける時間と質の圧倒的な違い」です。
私が設計する建物はしっかりと時間を掛けて検討し、吟味しないと出来ないものだと自負しています。これは他の建築士の建物を見ても、時間を掛けて検討された建築・空間であるものは、素材の使い方や納まりなど、あらゆる面で質が違います。その様な質を醸し出す建築を求めている発注者であれば、「設計業務に掛ける時間」という価値観は理解してもらえるはずです。結果的に同じような工事費になるとしても、どの部分にどれだけの金額を掛けるかの配分によって出来上がるものの特徴や質は変わる。という面をしっかりと話をして、そもそも設計事務所に業務を依頼する意味を理解してもらい、その上でCM分離発注方式がもたらす可能性を付け加えて説明します。自分の業務の本質はCM分離発注方式を行うことではなく、建て主さんが満足できる質の高い建物をつくることです。私はCM分離発注方式が「目的ではなく手段である」ということを確実に伝えています。CM分離発注方式は、発注者の思いと私のこだわりを叶える手段の一つであることは間違いありません。

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